『アナベル・リイ』(小池 真理子) > 怯え続けることが私の人生だった。 > 私は今も、彼女の亡霊から逃れることができないのだ。 > > 1978年、悦子はアルバイト先のバーで、 > 舞台女優の夢を持つ若い女・千佳代と出会った。 > 特別な友人となった悦子に、彼女は強く心を寄せてくる。 > しかし、千佳代は恋人のライター・飯沼と入籍して間もなく、 > 予兆もなく病に倒れ、そのまま他界してしまった。 > > 千佳代亡きあと、悦子が飯沼への恋心を解き放つと、 > 彼女の亡霊が現れるようになり――。 ゾワゾワしたい人におすすめ。 ホラー、というジャンルではくくれないような、ただ怖いだけではない作品。 読み終わったあとも、何だか視線を感じるような…。 アナベル・リイを題材にした本で、は大江健三郎さんの『臈たしアナベル・リイ総毛立ちつ身まかりつ』を昔読んだことを思い出しました。今は『美しいアナベル・リイ』というタイトルになっているみたいです。 [https://amzn.to/3TynXxd][1] [1]: https://amzn.to/3TynXxd

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『セーヌ川の書店主』(ニーナ・ゲオルゲ) あなたが本に期待するのは何でしょう? 少しの間の暇つぶしか、時間制限のある逃避行か。それとも癒してくれる薬のようものか。 この本にはその全てが詰まっています。 一人の傷ついた男の物語。そして、多くの本や煌めくような言葉、フランスの田舎の風景や料理、多くの手紙…。 彼が癒されていくのを読みながら、私の中にある固まりが、柔らかくなっていくのを感じました。 苦しみさえ、「わたし」という物語の登場人物。嫌な役を引き受けた、と「苦しみ」は思うでしょうが、彼がいるからこそ輝く人生というのもあるでしょう。 書店主の男の苦しみは、男を旅に誘い、多くの仲間と出合わせ、また愛することの喜びをもたらせました。 人生に行き詰まりを感じている人、本が持つ魔法のような効能を久しく忘れている人は、是非この本を手に取って、ページをめくってください。 巻末に「処方箋」として物語に出てきた本とその効用や、男がフランス各地で出会った料理のレシピが載っているのが何とも素敵‼︎

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『ペーパー・リリィ』(佐原ひかり) 軽やかに駆け抜ける、女2人のロードムービーを見た感じ。 文章が頭の中で映像になり、2人の笑い声や言い合う声を耳で聞いた気持ちになり、暗い夜道を一緒に歩いたような気がして、最後は自分の気持ちがとても楽になっているのを感じました。 表紙の絵がとても可愛くて、最初は電車で読むのが少し恥ずかしかった。でも話を読み進めるうちに、この絵がたまらなく愛おしくなってくる。物語の世界にぴったりで、とても好きになりました。読んでいる途中に、何度も見てしまうくらい。 きっと本屋で平積みされているのを見ただけなら、きっと「自分向け」では、ないと思って、手に取ることはなかったと思います。Twitterで見つけてよかった。 毎日に息苦しさを感じているとき、きっとこの物語があなたを夏の逃避行に連れて行ってくれると思います。 そして、いつも自分を正当化してしまい、それに気づいて自己嫌悪に陥ったりすることがあるなら、そんな自分も愛せるような、自分にも優しくなれる、そんな一冊です。

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『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』 (町田そのこ) 思いがけないきっかけでよみがえる一生に一度の恋。 そしてともには生きられなかったあの人のこと――。 大胆な仕掛けを選考委員の三浦しをん氏辻村深月氏両名に絶賛されたR-18文学賞大賞受 賞のデビュー作「カメルーンの青い魚」。 すり鉢状の小さな街で、理不尽の中でも懸命に成長する少年少女を瑞々しく描いた表題作。その他3編を収録した、どんな場所でも生きると決めた人々の強さをしなやかに描き出す5編の連作短編集。(解説・吉田伸子) 商品紹介より この本には、いろんな人の人生の一幕があリます。辛い人生。振り返りたくない人生、でもかけがえの無い人生。 物語を彩るのは、決して楽しいときばかりではありません。どちらかと言えば目を背けたくなるような辛いものかもしれません。 でも、その中でキラキラと輝く瞬間を、読者は水槽の魚を見るように、そっと眺めるのです。 描かれるのは、何人かの登場人物の人生の一幕。そのひと織りひと織りが、紡がれて別のひとの人生へと繋がっていきます。 たったひとり、他の人とは違う、何だか生きづらい世の中。自分だけが違う生き物のように感じ。でも、そんな自分も気付くことができるかもしれない。 自分は世の中から否定されているのではない。あなたを大切に思ってくれる人がいる限り、この世界はまだ自分を受け入れてくれる。 ここではない、どこかかもしれません。しかし、海のようにこの世界はどこへだって繋がっている。 どこへだって行ける、という希望をこの本に感じました。

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『舟を編む』(三浦しをん) あなたには何か夢中になれるもの、これがあれば他は何もいらないというもの、人生をかけることができるものがあるでしょうか。 『舟を編む』は辞書づくりに人生をかけた人たちの物語。まさに生きることと辞書を作ることが一致している特異な人が主人公。彼の頭の中には辞書「大渡海」を出版する、ということしかありません。 この人、辞書づくり以外には全く興味がなく社交性にも欠け、そのちぐはぐな振る舞いや言動がとても面白いのですが、私は、出版社で働く主人公の同僚で、特に辞書づくりに情熱を持っていない「普通の人」の方にとても感情移入してしまいました。 私自身も、必死に何かに取り組んでいる人を横目に見ながら、自分は到底そこまでできない、と思いながら生きている人間です。 そのような人からみれば、きっと主人公のような人がそばにいると、嫉妬心と尊敬がない混ぜになった微妙な心持ちで接することになるのでしょう。そしてその度に「なぜ自分はこうでないのだろう」「自分は何なら夢中になれるだろう」と自問自答すると思います。 会社の帰りの電車のなか、スマホを眺める指をとめ、ふと「こんな人生でいいのかな・・・」と虚しい気持ちに囚われることはないでしょうか。 この物語は「自分には何もない」と思っている人にも、勇気を与えてくれると思います。あなたにはあなたの生き方がある。自分ではない誰かの人生を羨むのではなく、あなたの人生を歩む。 そして、真っ直ぐにやりたいことに夢中になっている人たちも、きっと悩みや葛藤を抱えながら生きている。そう思うと「自分がしたいこと」ではなく「自分が誰かためにできること」は何だろうか、とも思うのです。 あと、辞書づくりの裏側や出来上がっていく様子を知ることができるのもとても興味深い。大学の専門分野の先生に、見出し語の用例を依頼しているところなんて面白いですよ。辞書ってこうやってできていくものなのだ、と感心しました。これから辞書を見る目が変わると思います。何だか、辞書を「読みたく」なりました! https://amzn.to/3EXcNyn

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